インストラクターと水中で手をつなぎ，四股を踏む．

 

　呼吸が合ってきたところで後ろに倒れるようにリードされる．

 

　しばらく昨日のWATSUと同じセッションを味わい，呼吸の様子を確かめられながら少しづつ顔から頭部全体までが水面下に導かれる．

 

　時には両手を引っ張られ，時には足からリードされて，変幻自在に水中で動かされる．

 

　広がった両手の平が，波打つように水中を舞う．

 

　頭から逆さまに沈められ，久しぶりの水圧を全身で感じながら，しばらくの間すべての動きが止められる．

　時折，口から出る小さな泡が，静かな音を立てて水上へと遠のく．

　その音が遠のいてゆくのと同じ感覚で，わたしの意識はさらに深い無意識へと溶けて行く．

 

 

　すべてが止まる

 

　それは，小さな自己の死の体験だ．

 

　永遠とも思える瞬間‥

 

　頃合いを見計らって，頭部が水面へと導かれ，呼吸することを想い出す．

　ヨーガのクンバカと似ていながらも，バンダを必要としない更に自然な止息である．

 

　誕生と死‥そして死から再生誕‥

　何度も何度もそれを追体験する．

　瞬間瞬間に起きてくるあらゆる抵抗感を手放していく．

 

　しばらくの後，後頭部がヒノキの縁に軽く付けられ，足が片方ずつ水底に押し付けられる．

 

　グランディング——あらゆるワークで最も重要な瞬間．

　母であり，産婆でもあると思える眞紀さんは，とても慎重にそのプロセスを味わうようにリードしてくれた．

 

　物心ついたころから大人になって，赤ちゃんのように扱われて全面的に誰かに自分を委ねる体験はそうあるものではない．